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最高裁判所第二小法廷 昭和55年(オ)732号 判決 1985年12月13日

主文

原判決を破棄する。

被上告人の本件控訴を棄却する。

控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。

理由

上告代理人村田武の上告理由第一点について

保証人と債務者との間で求償権について民法四五九条二項によつて準用される同法四四二条二項の定める法定利息に代えて約定利率による遅延損害金を支払う旨の特約をしたときに、代位弁済をした保証人は、債権者に代位して取得した債権及びその担保権について、物上保証人及び当該物件の後順位担保権者等の利害関係人に対する関係において、右特約に基づく遅延損害金を含んだ求償権の総額を上限として、これを行使することができ、かつ、保証人と物上保証人との間で民法五〇一条但書五号の定める代位の割合を排除して保証人が全部代位することができる旨の特約をしたときに、代位弁済をした保証人は、物上保証人の後順位担保権者等の利害関係人に対する関係において、右の特約に基づいて債権者が物上保証人に対して有していた根抵当権等の担保権の全部を代位行使することができると解すべきであることは、当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和五五年(オ)第三五一号同五九年五月二九日第三小法廷判決・民集三八巻七号八八五頁)。叙上の観点に立つて本件を検討するに、原審の適法に確定した事実関係に基づいて計算すると、(一) 上告人が昭和五三年一月一七日の本件配当期日において有していた原債権たる貸金債権の額は、元本については、上告人が代位弁済した元本額二〇〇六万円から昭和五二年七月七日の配当期日において配当を受けた四九四万六四四六円を控除した残額一五一一万三五五四円であり、遅延損害金については、右元本二〇〇六万円(昭和五二年七月七日の配当期日の翌日からは右の一五一一万三五五四円)に対する代位弁済の翌日である昭和五〇年七月四日から本件配当期日までの約定利率年一八・二五パーセントの割合による遅延損害金八八二万八〇三四円から昭和五二年七月七日の配当期日において配当を受けた八三万〇四六四円を控除した残額七九九万七五七〇円であり、(二) 上告人の右の原債権たる貸金債権を担保する根抵当権は、極度額が二四〇〇万円、確定元本額が二〇〇六万円であり、元本確定後の配当の状況は右のとおりであるから、右の原債権たる貸金債権の元本及び遅延損害金の残存額全部を担保するものであり、(三) 上告人の右の原債権の代位行使の上限を画する求償権額の本件配当期日における元本及び遅延損害金の合計額は、上告人が配当要求した金額を上回る二二一七万七一八六円であり、(四) そうすると、競売代金九七五万円から競売手続費用及び上告人の先順位債権者に対する配当額の合計四八万三〇九九円を控除した残額九二六万六九〇一円の全部(このうち遅延損害金に充当される金額は上告人の配当要求における遅延損害金額の六四五万七一〇五円であり、元本に充当される金額はその余の二八〇万九七九六円である。)につき上告人が配当を受けるものということができ、結局上告人の請求は理由がある。しかるに、原判決は、前記冒頭に説示したところと異なる見解のもとに、上告人の請求を棄却すべきであるとし、これを認容した第一審判決を取り消したうえ、右請求を棄却しているが、右は民法五〇一条の解釈適用を誤つた違法なものであり、その違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は、その余の点について判断するまでもなく、破棄を免れない。そして、前示のとおり、上告人の請求は正当として認容すべきものであるから、これと結論を同じくする第一審判決は相当であり、したがつて被上告人の本件控訴はこれを棄却すべきものである。

(裁判長裁判官 木下忠良 裁判官 大橋 進 裁判官 牧 圭次 裁判官 島谷六郎 裁判官 藤島 昭)

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